【book_66】雄大な自然描写に心惹かれて
どうも、つんどくです。
最近は純文学がマイブームでして今回は梶井基次郎『檸檬』をご紹介していこうと思います。
肺結核のために三一歳の若さでこの世を去った著者、梶井基次郎。
丸善で本を高く積み、その上に檸檬を置いたお話『檸檬』はあまりにも有名。
代表作『檸檬』しか読んでいなかったので、他の作品も読んでみると丁寧な風景描写が多いことに気が付きました。
それは、明日さえ生きられないかもしれないと不安に思う毎日の中で、目の前に映る自然の雄大さと生き生きとする生命力の美しさに心が奪われていたのかもしれません。
ある日、空は早春を告げ知らせるような大雪を降らした。
朝、寝床のなかで行一は雪解の滴がトタン屋根を忙しくたたくのを聞いた。
窓の戸を繰ると、あらたかな日の光が部屋いっぱいに射し込んだ。まぶしい世界だ。
雪解がトタンを鳴らす音や、日の光が部屋に射し込む眩しさが、読者の五感を刺激して主人公が見ている風景を一層リアルに感じさせてくれる文章にとても美しさを感じることができました。
個人的におすすめなのは『城のある町にて』と『冬の蠅』です。
『城のある町にて』では、6章からなる物語で、純文学を読み慣れていない人にとっては、少し長く感じるかもしれませんが、各章で主人公・峻の自然や他人、出来事に対する繊細な思いが綴られていてとても読み易いです。
『冬の蠅』では、冬の天井で見るよぼよぼの蠅から一篇の小説を書こうと述べているのでこれまた面白い。
普通、蠅から何か着想を得て小説を一本書こうとは思わないじゃないですか。
気になったら是非読んでみてください。おすすめです。
角川文庫から出ているかまわぬコラボカバーはレモン柄で、本棚に入れておくととてもオシャレな感じです。
表題『檸檬』を収録した14篇の小説が400円(+税)で読めるのならとてもお得だと思いますので、『檸檬』しか読んだことないな~って人には特におススメの一冊です。
それではまた次回。