【book_28】火花 - 初めて読み進めるのが辛いと感じた1冊
どうも、つんどくです。
寝れなかった。これほどまでに感情移入する読書体験も滅多にないのでネタバレをしないでどう書いていっていいものか迷うところだ。
文学作品というのを未だに充分理解していない私がこの本を読み終えたとき、もしかしたら文学作品は私の感覚に合うのかもしれない、そう思わせてくれる1冊だった。
売れない若手芸人が主人公の文学作品って面白いか、、、?
芸人が芥川賞受賞という話題も重なり、どこかで手を出したくない自分がいたのは事実だ。しかし、そう思っていた時間を真っ向から無駄だと思わせるほどの没入感は、読後でもしばらく続いて眠れなかった。
売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。(背表紙より)
徳永の生き方
悔しい思いをしながらも冷静に、着実に成果を残していく徳永。
世間の目は決して温かい目では見守ってくれない現実を真正面から受け止めながらも、自分のやりたいお笑いとは何なのかを自問自答し、日々葛藤していく心情を文章にして追うのはとても辛いものがあった。
テーマがお笑いだからこそできた作品かもしれないが、お笑いでないテーマだったら私は最後までこの本を読むことができたのか、と少し疑った。
なぜなら他のテーマで夢を追う人間の物語を読んだら辛過ぎて途中で読めなくなってしまっていただろう。
物語を通して神谷はお笑いの美学を徳永に伝えるが、徳永の中にはちゃんと彼自身の意見が存在し、違う時は違うと思っている彼の考え方がとても好きだった。
自分の意見を持つ。これはお笑いに限ったことではなく生きていくうえでもとても重要だ。
神谷の存在
破天荒な漫才をする神谷の生き方は狂気と感じる面、芯を曲げずに(というか曲げ方を知らずに)いつまでも突き進むその姿にどこか羨ましいと感じている自分がいた。
世間の目を気にして生きている自分に自信など持てるはずもなく、それを言い訳にして自分の信じた道ですらも懐疑的になる己の心の弱さ。
世間の目を気にし過ぎてやりたいことができない、自分をさらけ出せないなんてそれこそ生き地獄だよな。
そう思うとこの人はなんて強いんだ、と自分の器の小ささに心底嫌になる。
いい意味でもわるい意味でも彼が他人に与える影響は大きい。
彼はそのことを知らないし、むしろそれが良いとすら思える。
求められるお笑いか、自分が信じるお笑いか
一発屋というタグもある今の日本で、お笑いとは何なのだろうか?
テレビで観るお笑い芸人たちが本気でやりたいお笑いとは一体どんな感じなのだろうか?世間の目を気にせず、売れる売れないなども考えず、己がやりたいお笑いをしたときに何が見れるのか?そんなことを読後考えていた。
まわりのことを気にしないで好きなことをやるのであればそれは趣味でこと足りる。
しかし自分の生死がかかってる状況では、世間を気にしなければいけない現実。
世間が求めるお笑いの中を死に物狂いで駆け抜ける芸人たちが見せるお笑いには、本当に幸せな人が存在するのだろうか?
自分のやりたいことを見つけた人は本当に幸運だ。
しかしそれを続けていく中にも自分のやりたいことと世間の求めるものが一致しないときがあると思う。
やりたいことをしたくてこの仕事についたのに、いつの間にか相手の求められていることしかできない自分になっていた、という人も多いのかもしれない。
そして徐々に自分の人生についてギモンと不安が入り混じった気持ち悪い感情があふれてくる。
これが私の人生なのか?私が生きていたかった人生なのか?
求められていることが自分のやりたいことならそれはすげーラッキーだ。
しかし自分の好きなことが誰にも求められず、受け入れてもらえなかったとき、その人の人生はたしかに否定されているような気持ちになる。
すごく惨めで、自分の人生ってマジでなに?って毎日思いながらも現実と向き合う姿はカッコいい。かっこいいよ。
でも生きていく上でそれはこれっぽっちも足しにはならないんだよ。
夢をあきらめる人もたくさんいる。
ひとりの人間の夢を散らせた責任は決して世間ではない。
しかしこの悔しい思いをどこにも吐けず、次のステップに進み始める人の人生がどれだけ辛いモノか知ってほしい。
夢を追いかけている人、夢を追いかけていた人に特におすすめの1冊でした。
NETFLIXでドラマもやっているので是非観てほしい。
映像作品で泣いたのは人生で初めてだった。
それではまた次回!
【今日のひとこと】ドラマ観過ぎて寝不足って久々、、、