つんどくです。

知的好奇心と創造を、

【book_53】森博嗣 『小説家という職業』を読んで

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どうも、つんどくです。

小説家から見た「小説家の世界」がいったいどういうものなのか、気になって読んでみることにしました。

作家さんが自身の業界や文章を書くということに対してどういった考えを持っているのか興味がありました。

以前にはスティーブンキング「書くことについて」や村上春樹「職業としての小説家」を読んでいて、どちらも「書くとは?」「小説とは?」といったようなテーマを個人の考えを綴っていて面白かったです。

彼の小説は読んだことがないのですが、この「小説家という職業」のkindleサンプルを読んでみるとこれがまあ面白い。

それからずっと気になってたので先日、遂に購入してしまいました。

今回はそんな著書の中から特に面白かった箇所をピックアップしてご紹介します。

内容紹介

小説家になるためにはどうすれば良いのか?小説家としてデビューするだけでなく、作品を書き続けていくためには、何が必要なのだろうか?プロの作家になるための心得とは?デビュー以来、人気作家として活躍している著者が、小説を書くということ、さらには創作をビジネスとして成立させることについて、自らの体験を踏まえつつ、わかりやすく論じる。

(Amazonより引用)

📚おすすめな読者📚

 

  • 小説家としてデビューしたい
  • 出版界の実態と今後を知りたい
  • デビュー後の生存戦略を知りたい

定価 : 700円 + 税

ページ数 : 199ページ

小説家で生きていくという姿勢

本書を手に取る人の半数以上がもしかしたら小説家になりたいと思っているのかもしれない。

本が好きで、本に関わる仕事がしたい時にどういった仕事があるかと考えれば創作の世界が出てくるというのは当然である。

中には著者の大ファンで彼のような小説家になりたいと思っている人もいるだろう。

しかし、本を開いてみると、そこには想像とまったく違ったことが書かれていた。

まず、著者は小説があまり好きではない。

小説家なら読書好き、もしくは本の虫というイメージだったが、彼はその逆である。

読むことも、書くことも趣味にしたことは無い、とまえがき1ページ目で主張している。

ここで私のピカピカに出来上がっていた小説家というイメージが少しゆがみ始めてしまったよ。

そして開始1ぺージ目からジャブをくらわしてくるのに、次のページへ進めるともう本書の結論が述べられていた。

もしあなたが小説家になりたかったら、小説など読むな。

(p.4 「まえがき」より引用)

開始5分とたたない内に私は1・2・フィニッシュのストレートパンチをくらってノックアウトしていた。

もう少し説明すると、「自分の好きなことを一旦忘れる」ということが小説家になる上で大切なことなのだそうだ。

さらに小説家になるための文章術や、誰でも読みたくなるような文章を書く方法と言ったいわゆるノウハウ本を読むのも意味をなさないそうだ。

大事なことは、「こうすれば」という具体的なノウハウの数々ではなく、ただ「自分はこれを仕事にする」という「姿勢」である。その一点さえ揺るがなければなんとかなる、と僕は思っている。ようするに、「小説を書いて、それを職業にする」という決意があれば、ノウハウなどほとんど無用なのだ。

(p.5 「まえがき」より引用)

誰かの真似をするでもない、ノウハウを理解してからデビューに向けて頑張るでもなく、必要なのは決意だけであった。

これは何も小説家に限った話ではない。

どの職業にも苦しいことだったり、諦めてしまいそうなときもあるだろう。

何がいけないんだろうか、と焦燥感に悩み、ノウハウ本や自己啓発を読みあさって気が付けばノウハウコレクターになっていたなんて経験も中にはいるのではないだろうか?

しかし、この決意の姿勢を保ち続けることができればどこで働いてても、何とかやっていけるのではないだろうか。

どうしよう、どっからどう読んでもスポ根のそれである。

まえがきでこの熱量!続きが楽しみでしょうがないぜ!Yeah!!!

小説執筆のディテール

衝撃的な「まえがき」から始まった本書だが、章を進むごとにフセンの数がどんどん増えていく。

別に私自身、小説家になろうとはこれっぽっちも思わないのだが、小説家になる際に役立ちそうな箇所だと思うところはフセンを貼るようになっていった。

それだけこの1冊に没入していたということだ。

特にフセンの数が多かったのが、第5章「小説執筆のディテール」である。

ディテールと言う通り、この章では小説を生み出していく上で大切であることが他の章にも負けないくらいギッシリと書かれていた。 

私が選ぶこの1文

現実の中に非現実を紛れ込ませるか、あるいは、非現実の中に現実を連想させるか、創作とはこのいずれかだと僕は考えている。

(p.180 「小説執筆のディテール」より引用)

私の中では迷わずこれである。

何故なら私の好きな小説というのがぼんやりとだが「日常の中にちょっと非日常がある世界」だからだ。

それを著者は的確な言葉の槍で私の胸に突き刺したのだ。

恐るべし森博嗣さん。。。

まとめ

 タイトルが「小説家という職業」なだけに、内容は少し堅いイメージがあるかもしれないが、まったくそんなことはない。

その論理的な彼の考えを知りながらページを進めていくと、ああ~こんなこと考えてるんだすげーなーと思う反面、笑ってしまう箇所も多い。

特に出版界への不満なんかは笑いっぱなしだった。

いち読み物として大変楽しく読める1冊でした。

おすすめです。

それではまた次回!

あつ森のゆめみでいろいろな島に見学行ってるけどどこもレベル高すぎて楽しすぎる。