【book_59】普通という名の狂気 『コンビニ人間』
どうも、つんどくです。
普通・基準は残酷だと思っている私にとって、ところどころ読んでいて辛いものがありました。
概要
36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。
(Amazon商品ぺージより引用)
- 他人と合わせるのが苦痛
- だってそれが普通でしょ?と言われて違和感を感じる
- 人づきあいに疲れている
比較で生まれる幸せな人生
私はよく他人と比較して落ち込んだりしているような自己肯定感が低い人なんですが、案外多くの人が無意識でも他人と比較したりして心の中で嫉妬や自己嫌悪が生まれることがあると思います。
しかし、自分の中の普通や基準で他人と比較したときに、自分の方が優勢に立ったときというのは顔には出せませんが安心感や優越感というものが感じられるかと思います。
テストの点数があいつより良かった。自分の方が年収が高い。身長が高い。イケメン。
などなど、比較対象というのは考えればいくらでも思いつきます。
自分と他人の人生を比べないと幸せなのかもわからない現代社会って本当に幸せに生きるということが可能なんでしょうか?
価値観の矯正
だって皆こうしてるんだから普通でしょ?
これぐらい普通にできるよね?
私は「普通」や「基準」という言葉が嫌いです。
己の偏見や価値感だけで作った「普通」という概念を偶然他者と共感できただけでそれが正解や正義とみなす場合があるからです。
やっかいなのはその「普通」や「基準」をそう思っていない人に対しても強制してくる人たちが少なくとも存在するということです。
別に他人の考え方を否定するつもりは全くないのだから、ほっといて欲しい。あなたの普通を押し付けないで欲しい。
そう思った日が人生で何度も経験しているために、主人公が就職や結婚、年齢などのことで数人から迫られたりしている場面は読んでいて辛いものがありました。本人はまったく気にしてなさそうなんですけどね( ´∀` )
逆に言うと主人公のその精神力?が少し羨ましくもありました。
私が選ぶこの1文
「え、自分の人生に干渉してくる人たちを嫌っているのに、わざわざ、その人たちに文句を言われないために生き方を選択するんですか?」
(p.91 より引用)
この1行でなぜか文字を追う私の両目が止まりました。
一回読んだだけじゃ理解できませんでした。
普通という価値観を押し付けてくるのが嫌いなのに、その人たちの冷たい視線を避けたいがために普通を装うのです。
世の中の多数決で決められた普通でできた人たちの中で生きていかなければいけない現代は、人によっては本当に生きづらい。
いいじゃん、他人は他人で。自分は自分だよ。
「他は他!うちはうち!」
母親から聞いたそんなセリフがいつから逆転したんでしょうか。
まとめ
芥川賞受賞作品ということで心理描写もあるのかと思ったのですが、面白いぐらいになかった。
しかし、それゆえにテンポが速く、読者を物語にどんどん没入させていきます。
コンビニ(convenience)って便利な・都合の良いって意味があるので他人から見たら主人公はいつでもバイトに入ってくれる便利な奴=コンビニエンスな人間だなと思うこともできるし、主人公からしたらコンビニで働くことによって他人が望む「人間」になれる便利な場所としているので「コンビニ人間」というタイトルには、とても納得できるものがありました。
ページ数も少ないので、一気読みがおススメです。
それではまた次回!
作中で登場した白羽だけは一発殴らせて欲しい。