【アメノオト】
家の窓を強く叩く音が聴こえる。
窓ガラスが壊れる心配などはない。
不快感を感じさせないその音はときに止み、ときに激しくなっていた。
夏の昼間はいつも暑くて眩しくてそれでいて生きづらい。
しかしたまに聴こえるこの音は何故だかとても落ち着く。
AM 09:38
本から窓の外へ目を向ける。
エアコンと扇風機の電源を切る。
カーテンのレース越しに見えるその景色はほとんどが灰色で、人が出す音を全てかき消していた。
歩く音、しゃべる音、車が道路を走る音。
そんな人工的な音がこの時間だけは全てかき消される。
この瞬間は自分しか存在していないと思わせるぐらいの異世界感。
毎日がこんな天気ならいいのに。
今はただ、この音を静かに聴いていたい。