つんどくです。

知的好奇心と創造を、

JIMOTOフラペチーノ

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週末の土曜日、晴れ。溶けるように暑い日差しがカーテンを開けたときから私の身体を突き刺していた。

 最高気温は30度をゆうに超える。そんな中でも私は日々の運動不足を解消するために近くのショッピングモールへ行き、スターバックスでアイスコーヒーを飲みながら読書をするという行動を積極的にとっている。二か月間を費やして燃やした3kgの憎たらしい脂肪も一週間でリバウンドしてしまった。ここまでくると笑えてくるのがデブの末路なのだろう。そんな危機感を多少感じるためにも、モールまで暑い日差しの中20分弱歩くのだ。

 お気に入りのドクターマーチン3ホールを履き、帽子を被るのが私のなかで定番ファッションだった。マーチンはせっかく買ったブーツだし、経年変化を楽しみたいので、外出する機会があればそれ一択。例え靴の中がサウナ状態になったとしてもマーチンの前になれば我慢できる。何より履いているとテンションが上がる。帽子は単に髪を切っていないので恥ずかしいから被っている。無造作ヘアーと言えば聞こえは良いかもしれないが、言い換えれば自分の見た目に無関心で自己管理ができないブタ野郎である。毛量が多いからか、フケも多い。被り物なしで外出した際、背後にいる人が私の後頭部を見て「うわ、フケ、きっも……。」と何も言わずに蔑むような眼で私を睨んでいたらと思うと私はもう立ち直れる気がしない。そう思うほどに自分の見えていないところにこそ人の弱点というか欠点というものが見えてくるものだと思っている。

 帽子にマスクでぜえぜえと言っている汗だくのデブはどう見ても不審者なのだが、それでもいまだに警察につかまったことがないので不思議だ。アイスコーヒーを頼もうと思ったのだが、JIMOTOフラペチーノを飲んでいなかった。暑さもあって、冷たいものが飲みたかったのでフラペチーノを注文。夏の空を表すかのような爽やかな青色、積乱雲を思わせるほどにどっぷりとのったクリーム。ギラギラとした太陽を思わせるほどに輝いている黄色いソースがその上から降り注がれている。この一見芸術品と思えるような飲み物に汗だくの不審者が口をつけようというのだから見た目は世紀末なのかもしれない。明るい挨拶をスタッフと交わして受け取ったそのフラペチーノはどこか異世界の飲み物、それかサイバーパンク感を思わせるほどの近未来的な飲み物を彷彿とさせた。失礼を承知で言わせてもらうのならサイボーグの燃料にすら見えた。

  率直な感想は脳内だけにとどめて席についた。何を今さらと思うかもしれないが、デブな私が今からこの砂糖でできた飲み物を口にしようとするのだからデブの中でもなかなかの威厳を保とうとしてきているのではないだろうか。デブのなかのデブだ。漢の中の漢、と流れは同じなのだがどうしてだろう、お腹は張っているのに胸は張れなかった。大きなストローを積乱雲の頂点に突き刺す! 深海の底まで突き刺す! 恐る恐る口をつけた。暑さでやられていたからだろう、飲み物の冷気が舌の上に流れ込むのを感じた。しかしその後からは、砂糖。甘い、甘い、甘い。大学を出て俺はビッグな男になるのだ! と大学中退宣言をしている若者並みに甘い。普段、ブラックコーヒーしか飲まない私にとってこの甘さは飲み物というよりむしろスイーツのそれだった。スムージーの細かいザラザラとした氷がとても冷たくて美味しいのだが、その後からクリームが追い打ちをかけるようにして舌の上にくるのでイッキにぬるくなる。美味しい。たしかにフラペチーノは美味しい。しかし私には甘すぎた。いや、デブが何をほざいているのかと思う人もいるかもしれない。いや、いるだろう。寝言は寝ているときに言えと。ちなみに私は寝言が言えないぐらい、いびきをかくので残念だったな。しかしデブにもいろいろなタイプがいるということだけを今回は覚えておいて欲しい。

  そもそも私は「期間限定」というフレーズが効果抜群なのだ。つい試したくなってしまう。仮に普段頼まないようなものでも今回だけは、とつい頼んでしまう。期間限定のフラペチーノを飲めたという満足感は得られた。しかし、そのおかげで腹がパンパンになった。Tシャツから浮き出るパンパンのお腹はなかなかに恥ずかしいものがある。余計に私は胸を張れずにスタバを後にするのだった。