「お酒が飲めないのに人生何が楽しいの?」
嫌な思い出はなんの前触れも無く突然やってくる。
ある飲み会の席で上司に言われた一言である。
数年前のとある会社の飲み会。
私の上司は酒に酔うとプライベートな質問を大声でズカズカと聴いてくるちょっと面倒なタイプの人だった。
「え、つんどく君はお酒飲めないの!?」
私はまったくお酒が飲めない。
飲み会へ参加するのは嫌いではないし、参加してしまえば結構楽しめる方である。
その上司も酔うと確かに面倒だが、基本はとても良い先輩なので酔って話しているときはそこまでシリアスにならず、どちらかと言うと笑って相手をしているぐらいだ。
その日も私がお酒を飲めないということを初めて聞いたような表情をして驚いていた。
「お酒が飲めないのに人生何が楽しいの?」と上司。
ほー、今回の質問もなかなかエッジの効いているものだ。
「えー、楽しいことなんていろいろあるじゃないですか!」
「そうか、、、例えば?何が楽しいんだ?」
「そうですね~、例えば・・・」
、、、ん?
私は何を楽しみに生きているんだ?
何も浮かばない。
心から楽しいと思えることが最近何かあっただろうか?
しばらく持っていたボールを隣の席の同期へパスし、その場をスルーした。
「ん~そういえば無いっすね楽しいこと。ははは!」
つまらない男だ、と嘲笑され他の話題に移った。
飲み会は終了し、それから数年経つがあの質問はいまだに私の頭の中で繰り返されている。
心の底から楽しいと思えることを見つけるのは中々難しい。
気になったものを片っ端から試してみて、飽きたら止める。
読書も自分のペースで続いているが、好きならもっと読んでいるはず、と頭のどこかで考えてしまう。
何をするにも、もっとやるべきことがあるんじゃないか?今やっていることは時間の無駄なんじゃないか?と考えるようになってしまっていた。
気が付けば私は何が本当は好きなのかわからなくなっていた。
そして、今でもその答えが見つからないままでいる。
息が無くなるまでには、胸を張って自分の好きなことを話せるようになりたいものだ。
今日もまた、目の前の本を見つめ、しばらくしてから目をそらす。